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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

浄法寺漆考

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漆に関わっている人は国内で使われている漆のほとんどが中国産であることを知っているけど、あまりそれをおおっぴらにして話すことはないし、販売する時には逆に不都合な情報として隠す、というか積極的に表示することは少ないです。

逆に浄法寺は漆産地という特殊性もあって、下地、中塗りには中国産、上塗りに浄法寺漆を使うパターンが多いのでそれを正直に表示しています。それがお客様から見ると「なぜ中国産を使っているのか」という素朴な疑問になる。

別に浄法寺の漆屋だからといって中国産はダメとか否定するものではないし、むしろ中国産でもいい漆があることも知っています。漆掻きの苦労を考えると中国でも日本でも過酷な作業あることに変わりなく、漆掻きを生業とする中国の漆掻きさんをとても尊敬します。産地交流などできたら素晴らしいことですね。

日本での数少ない国産漆の産地ならではの、地元産漆をふんだんに使った漆器もあって当然だし、コストを抑えるために中国産を使った漆器があっても良い。どちらを選ぶかはお客様の判断です。

 

実は中国産漆が使われるようになったのは最近の話でなく、明治時代頃からと言われています。中国から安い漆が入って、それまでの日本国内の漆産地はどんどん消滅していきます。そんな中で福井県の漆掻き集団「越前衆」が全国各地に散って漆掻きをするようになり、浄法寺を中心とする岩手県北部、青森県南部エリアが全国有数の漆林を抱える場所として、越前衆の合理的な漆掻き技術を導入しながら栄えていくのです。

漆を植えて漆を採るというのは一人で全部やると非常に骨の折れる仕事です。その点、岩手県北、青森県南にまたがる旧南部藩エリアは地元民が民有林に積極的に漆を植えて育て、漆掻き職人はその成長した漆木を購入し、越前出身の漆仲買人が漆を購入して全国へ流通させるという漆生産の分業体制が取られました。それが現在まで細々ながら続いているのです。

 

浄法寺が日本で最後の漆産地となるでしょう。漆は漆掻きと一体となった一つの農林業文化であり、浄法寺はその頂点にあります。農業でも林業でもない、その間にある特殊な業態なので両方の知恵と技術を身につけていなければなりません。しかし昔ながらの方式による頂点であり、現在の経済・流通システムから決定的に遅れ、取り残されています。

漆は単に漆の木に傷をつければ出てくるものではなく、漆の苗木を植えて長年育て、漆掻き職人それぞれの流儀に拠った技術で採取し、その採取法により職人によって品質がまちまちで、さらにその後の保管や精製によっても漆の表情が変化する、総合的な産物です。それを体現できているのは浄法寺や大子などの限られた産地のみです。

中国でも、タイでもベトナムでもない、日本の優れた漆掻き技術というものがあるのです。それを今捨ててしまうのは非常にもったいないこと、いや、ここまで歴史・文化のあるものを無くすことは世界的な文化の損失になるのではないかと思っています。