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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

漆の品質

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「いい漆、悪い漆」。
漆の世界に入るまではそういう区分けがあるのだと思っていました。無論、そういう言い方は今でもするのですが、多くの漆職人、漆屋さんに会ってきて、漆というのは一概に良し悪しを決められるものではないことを痛感しています。

乾き(硬化)が早い漆であればいいという職人もいれば、じっくりと遅く乾く漆がいいという人もいます。ウルシオール成分が多ければ多いほどいいという人もいますが、抽出したウルシオールを、割合が低いウルシ液に添加してもそれほどいい漆にはならなかったと輪島に行った時に組合の人から聞いたことがあります。
漆の成分は結局は採取場所や採る人の技量、いろんな要素に依るものなので、それぞれ採り貯めた樽があればその数だけ漆の特徴も違うのは当然のこと。

それを均質化しようとすれば中国産と同じように一箇所に集めて、大きなプールみたいなところにシーズン中に採った漆を入れてブレンドすれば平均的な漆が出来上がります。
しかし、色艶、締りなどが良い漆も均質化することですべて平均的になってしまうのはもったいないことですよね。ただ、産地内に限ってのブレンドということができないかは興味があり検討しているところです。

一方で悪い漆というのは当地ではカス(ゴミ)が比較的多い漆のことをいいます。同じサイズの樽を買っても中身がゴミだらけだと損ですよね。しかし一定量のカスや沈殿物が入っていないと乾きに影響するので、全く入っていないのも問題。いい塩梅にカスが入っていないとダメなのです。

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最近、とあるブログ浄法寺漆の品質のことが載っていました。浄法寺漆はウルシオールが何%で他の漆に比較しても低く中国産と同じだというものです。
どんな漆を調べられたのか分かりませんが、これは漆を一面的に見ているとしか思えません。どういうルートで手に入れたものかも書かれていないので不明ですが、少なくとも昨年浄法寺の職人が採取した漆のうち盛辺のウルシオール成分は70%を超えているものばかりです。初辺漆は時期的に水分量が多いためウルシオールは60%台になるものもありますが、水分が多い初辺は乾きが良いため漆屋さんや職人が指名するほど人気があります。なのでウルシオールが低いからダメな漆というわけではありませんし、一種類だけを取り上げて全部がそうだという書き方はどうかと思います。

浄法寺の盛辺漆ではウルシオールが80%を超えるものもあります。これをいろいろブレンドしてしまえば様々な漆液ができあがりますが、浄法寺では職人同士の漆を混ぜて組合として出荷することはありえません。それは職人同士のプライドがあるからです。ただ、私が仕入れてブレンドするのは問題ないのですが。

漆は採る人によっても違うし、使う人によって評価も違うというのは国産漆をずっと使っていたお客さんの声ですし、私もそう思います。当初は何らかの基準を設定して、それ以下のものは悪い漆とする、というようなことができないか考えたのですが、これまでの漆の出荷状況を見るといろんな漆が売れていきます。これは売れないだろうと思った漆も「これはこれに合う漆だ」と言って買って行かれたりします。このようなことは出荷する側でしか分からないことなのかもしれません。
浄法寺へ直接注文していただければ、ウルシオールの濃い漆を選んで出すこともできますし、乾きの早いもの、遅いものを荒味漆の段階でセレクトできます。輪島の漆器屋さんでも指名する職人が違いますし、好みが違うのも面白いところです。松田権六は浄法寺の隣の二戸に住む職人の漆を指名で買っていました。

同じ漆産地の茨城の大子とは研修生の交流や漆サミットの開催などで共同して国産漆を振興していこうとしています。水戸漆、南部漆の時代からそれぞれ漆の産地として現在まで続いてきた数少ない産地ですので、これからも交流を続けていきたいと思っています。

それから、ブログの中に「震災特需でむしろ売り上げが大ジャンプしてうはうはな東北の某巨大産地ばかりがクローズアップされる中」とありますが、まったくの事実無根です。
売り上げは去年と変わりありません。鉄器や他の物産は驚異的売り上げのようですが、漆器のうち浄法寺漆器や漆に限って言えばまったく特需というものはありません。去年はテレビによく取り上げられましたが、職人たちは「注文はさっぱりだ」とこぼしています。

地道に浄法寺の漆を売っていく、それを続けていきたいと思います。