読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

賢治のことば

12月に入って今日で震災から9ヶ月。そしてあの時のような寒さがまた戻ってきました。曇り空で冷え込む日だとなんだかあの日のことを思い出してしまいます。

全国ニュースでは被災地の現状があまり取り上げられなくなってきました。でも岩手では毎日震災関係のニュースが流れ、死者・行方不明者数の数は毎日報道されていますし、まだまだ傷跡は深いのです。
若い頃宮古市に住んでいた私にとっても今回の津波は人ごとではありません。釜石の親戚や知人も被災していますし、お客様も仮設住宅での生活を余儀なくされていたり、新設したばかりの事務所が全壊してしまった方もいます。
このような商売をする中で、いかにして早く復興に貢献できるか、沿岸の人たちと一緒にできることはないかと思っています。でも漆という素材を扱っているとなかなか直接の接点がないので、売り上げの中から義援金を幾許かでも多くお送りすることで少しでも助けになれば…

ところで先日、NHK教育で放送された「100分de名著」という番組を見ました。毎月古今東西の名著を取り上げてわかりやすく解説する番組なのですが、今回12月の本として取り上げられたのは宮沢賢治銀河鉄道の夜」。
最近、賢治関連本に目がない私。書店でこの番組のNHKのテキストを見かけて買ってみました。今回案内役を務めているのは、作家で東京工業大学のロジャー・パルバース氏。私は坂本龍一が好きで、彼が出演した「戦場のメリークリスマス」でパルバース氏が助監督をしていたのは知っていましたが、賢治作品に関わっていたことは全然知りませんでした。
テキストには、賢治の生い立ちから、自分が若いころ日本語がまだ全く話せない頃に花巻を訪れ、生家で賢治の弟の清六さんと出会い、その後賢治作品を世界に紹介するようになっていった経緯、そして銀河鉄道の夜をはじめとする作品の解釈が載っています。賢治は、困っている人がいるとただ心配するのではなく、「行ッテ」一人一人と向き合ってその人のために何かをするということを大事にして実践する人だったといいます。「雨ニモマケズ」はその象徴的な詩です。

このテキストの中でパルバース氏は、次のように解説しています。

少数派や心身の不自由な方、虐げられ軽視されている人々の苦しみに無関心に見えるのに、うわべだけの感動や同情を示す人の狡猾さを、私たちは知っています。あるいは責任を果たすべき人たちが、表向きには社会のなかで犠牲になっている人々の救済について堅苦しい言葉で説明し、使い古された決まり文句の約束もしているけれど、彼らの窮状を改善しようという意思はあまり感じ取れない。
たくさんの災難が世の中にあります。僕達がそれらに立ち向かうためには、僕ら一人ひとりが、ひとりの人に対する責任をどう持ち、何をするのかではないかと思うのです。

賢治のように自分の身を粉にして相手に尽くせとは言えません。みんながみんな賢治の真似ができるわけではないし、相応の財や力を持っているわけでもありません。少なくとも、僕にはできない。
しかし、そこで「自分は無力だ」とあきらめてしまってほしくないのです。すべての人に、なにかできることがあるはずです。そのためには、世界を自分なりにとらえることが必要です。そこから、自分にできることはなにかと問い、実際の行動に移していく、これこそが自分の信念と使命にその短い生涯を燃やした宮沢賢治が、21世紀の今を生きるすべての人に送るメッセージなのではないかと思っています。

「がんばろう」とか「応援しています」という言葉、やはりうわべだけの違和感があって私はこの言葉を使いません。キャッチフレーズが被災地の人たちの力になればいいのですが、それよりも現地の人達に寄り添いながら、今後何十年とかかるであろう復興のため一緒になってがんばろうという姿勢が見えないとダメですね。一番近いところにいる岩手の人達がやらなければ…できる範囲でそれぞれができることをしていきましょう、岩手から。


まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう
しかもわれらは各々感じ 各別各異に生きてゐる
ここは銀河の空間の太陽日本 陸中国の野原である
青い松並 萱の花 古いみちのくの断片を保て

「農民芸術概論綱要」 宮沢賢治