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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

東文研セミナー

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9月29日、東京文化財研究所で「建築文化財における伝統的な塗料の調査と修理」題してセミナーが行われました。

毎年1,2回ずつ、東文研の「伝統的修復材料および合成樹脂に関する研究会」が開催していまして、私は3回目の参加。
全国から文化財関係者、漆関係者、学生、いろいろな方々が集まります。だいたい60〜70人くらいでしょうか。

毎回、漆が主役になることが多いセミナーですが、今回は漆や膠といった代表的な日本古来の塗料ではなく、それ以外の塗料にスポットをあてていました。

「チャン塗り」という技法を聞いたことありますか?
私は恥ずかしながら初めて聞いたのですが、江戸時代には盛んに行われていた塗装方法らしいのです。
建築装飾技術史研究所の窪寺先生の発表で紹介されたのですが、チャン塗りとは「桐油や荏油などの植物性油に松脂を加えたものを溶剤とし、これに顔料を混合したものを塗料として塗布する技法」と先生が定義しています。
チャン塗りの技法についての研究はほとんど行われておらず、窪寺先生が80年代後半から少しずつ研究をされてきた成果がこのほど発表されたのです。

松脂を使っているので漆塗りっぽい仕上がりになり、水にも強いという点が評価されて普及したと考えられ、漆塗りの代用塗装という位置づけではないかとのことでした。しかし、やはり塗装面の堅牢度が劣り、平滑な面を作りにくいということで高級感のある仕上げはできなかったようです。

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江戸時代には様々な建造物に使われてきたのに、チャン塗りは急に途絶えてしまいます。大正期には姿を消したのではないかと推察されています。
しかし、窪寺先生もお話されているように、文化財建造物の保存修理を行うときに、建設された際の施工仕様や工法で修理を行うことが原則の一つになっていることから、そもそも建物が何で塗られていたのかということをキチンを把握する必要があります。

昔から漆は高価なものでしたので、全部を漆で塗りたくても使えないということがあったのでしょうね。
東大寺大仏殿の江戸期の普請でも、幕府の予算が逼迫していたり、寺側の勧進がうまくいかなかったりして仕様の変更について双方でやりとりがあったりしてとても興味深かったです。

いずれ、漆や膠のほかにも知られていない塗装法があったということは驚きでした。

そのほか、いつもお世話になっている日光社寺文化財保存会の佐藤さんや明治大学の本多先生のお話もとても貴重で、素晴らしかったです。
文化財の保存修復の研究者と、現場で現役で修復に当たっている職人、塗膜の科学的な分析を行っている研究者、それぞれの立場が協同して取り組むということは今後の修復活動の基本になりそうな気がします。