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浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

岩手の人

3月11日の地震で被害に遭われた方々へ謹んでお見舞い申し上げます。
私も少し被害を受けましたが、沿岸の方々に比べれば全然たいしたことはありません。でも浄法寺に置いてきた漆のことが気がかりです。


地震に遭遇したのは、二戸市内や浄法寺で仕事を終え、八戸道の浄法寺インターチェンジから盛岡へ向かっているときでした。
ちょうど安比高原の近く、竜ヶ森トンネルに入った直後、急にガタガタとハンドルをとられそうになりました。これは変だと思いハザードをつけてトンネル内に停車。すると激しい揺れが襲ってきました。

トンネルの照明が一斉に点滅して一瞬消えましたが、すぐに復旧。長い揺れをトンネルの中で過ごすというのは本当に怖かった‥トンネルが崩れてこないかと…

なんとか盛岡に戻ることができましたが、3日間ずっと停電・断水の状態でした。



沿岸の惨状には絶句するばかりです。

私は社会人になってはじめて赴任したのが沿岸の宮古市でした。宮古市田老町、山田町、岩泉町を担当して、日々太平洋の海を見て仕事をしていました。

そんな見慣れた美しい三陸の海岸はすべて記憶の中にしか残っていません。妻の勤めていた津軽石地区、友達の住んでいた高浜地区、夜飲み歩いた宮古市の繁華街…そこも全部津波が襲い、見る影もありません。

沿岸には知人や親戚も住んでおり、避難名簿で名前を確認できた人もいるものの、まだ確認できない知人もいます。また、漆を買っていただいたお客様も被災されているようで、本当に心が痛みます。
でも、テレビで見る避難所での被災者の方々は気丈で、さすが浜の人達だなあと思いました。家族を亡くしたり、家財も失ったというのに。


昨日、ツイッターでもつぶやいたのですが、高村光太郎の「岩手の人」という有名な詩があります。岩手県民の粘り強さを象徴した詩です。

「地を往きて走らず、企てて草卒ならず、つひにその成すべきを成す。」

私は被災した沿岸の人々や、それぞれの持場で復旧作業をしている人々の姿を見て、この詩を思い出しました。

全国各地、世界各国からも救援の手が差し伸べられていますし、私のところへも安否を気遣うメールや電話を多数いただきました。本当にありがたい限りです。通常の業務に戻れるのはもう少しかかりそうですが、これからも希望をもって岩手を盛り上げて行きたいと決意しています。


 岩手の人    高村光太郎

  岩手の人眼静かに、鼻梁秀で、
  おとがひ堅固に張りて、口方形なり。

  余もともと彫刻の技芸に游ぶ。
  たまたま岩手の地に来り住して、
  天の余に与ふるもの
  斯の如き重厚の造型なるを喜ぶ。

  岩手の人沈深牛の如し。
  両角の間に天球をいただいて立つ
  かの古代エジプトの石牛に似たり。

  地を往きて走らず、企てて草卒ならず、
  つひにその成すべきを成す。

  斧をふるつて巨木を削り、この山間にありて作らんかな、
  ニツポンの背骨岩手の地に
  未見の運命を担ふ牛の如き魂の造型を。