japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

「縄文漆を科学する」シンポ、漆掻き実演最終日

f:id:japanjoboji:20101103144935j:image
11月3日で漆掻きの実演も終わり!この日は工藤組合長と大森清太郎さん、小村さんの三人が漆掻きをしました。
大森さんも親子三代の漆掻き、息子さんも職人として活躍しています。かつてはさまざまな場所まで出稼ぎして漆を掻いていました。苗木の生産もしています。

当日の天気はまずまずよかったものの、時折冷たい風が強く吹くので寒いのなんの。
文化の日は博物館の入館料が無料ということもあって、見学者は今までで一番多かったように思います。

この日は「縄文漆を科学する」と題したシンポジウムが開かれました。メンバーは明治大学日本先史文化研究所の先生方。漆の学際的研究ということで、皆さん明大理工学部と文学部が連携して立ち上げたプロジェクトに携わっておられます。
今年の1月に明治大学アカデミーコモンで開催された「漆サミット2010」の講演内容がベースになっており、今回は岩手県岩手町の縄文遺跡である豊岡遺跡からの漆工芸遺物の分析結果について発表が行われました。


1 「豊岡遺跡と漆工芸遺物〜東北地方晩期の世界と漆工芸」 岩手県立博物館 八木勝枝学芸員
2 「漆の文化と科学 漆文化の学際研究の世界」 明治大学理工学部 宮腰哲雄教授
3 「漆をいかに分析するか 漆の有機化学分析」 明治大学理工学部 本多貴之講師
4 「分析で見える技術 豊岡遺跡出土品の分析結果」 東京都立産業技術研究センター 神谷嘉美研究員
5 「漆の産地と年代 列島の漆と大陸の漆」 東京大学 吉田邦夫准教授
6 「土器の薄片観察 豊岡遺跡の漆塗土器の技術」 帝京大学山梨文化財研究所 河西学室長
7 「縄文の漆工芸 漆工芸と大洞式容器群」 明治大学文学部 阿部芳郎教授


縄文の漆を軸に先生方から語られる最新の研究成果をワクワクしながら聞きました。化学用語も多かったので、隣のおばさんはちょっと難しく感じられたみたいです。でも休憩時間中に資料を読み込んでいたりしてとても熱心でした。

有機化学専門の先生方からは「漆塗膜はいかなる溶媒にも溶けないので、分析が非常に難しい」という話がありました。一度固化すると漆はとても強い素材になるのです。


・数千年前の遺跡から出土する(腐らない)⇒菌に強い
・直火でも燃えない⇒耐熱性に優れている
・酸素や二酸化炭素をあまり通さない⇒化学的安定性に優れる


化学の専門家からこういう話をされるととても説得力があります。私も漆の抗菌性や耐酸・耐熱性の話をしますが、データや具体的事例に勝るものはないです。

それにしても縄文人が漆をここまで使いこなしていたというのは驚きです。単純に漆をそのまま塗っているのではなく、下地処理をきちんとしたり、精製して朱漆、黒漆をつくったり...そして土器の自由な造形は今みても新鮮です。縄文の漆から我々が学ぶことはまだまだ多い気がしています。