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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

浄法寺漆の世界

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 先週土曜日に、NHKのBSハイビジョンで浄法寺漆の特集番組が放送されました。
 「命の一滴いただいて 漆と対話する職人の一年」というタイトルで、前に東北地方限定で特集された「ワンダフル東北」の拡大版というか、こちらが本編になります。NHK仙台放送局が半年かけて浄法寺に入り取材しました。 
 オリンピックの開幕と同時だったので、あまり視聴率もよくなさそうでしたが、とても魅力的な映像で浄法寺漆の現状が紹介されていました。一年間の漆掻きの仕事を追いながら、研修生の日々の苦労や苗木から育てる生産者、日光東照宮での修理修復の様子、輪島での浄法寺漆の評価、などなど盛りだくさんの内容。今までこんな番組はなかったような気がします。
 舞踏家の田中泯さんの訥々としたナレーションも映像に合っていました。美しく滴り落ちる漆液を様々な角度から撮影したり、固まった掻き傷に沿って光りながら滴り落ちる雨粒を綺麗に捉えていて、さすがハイビジョンでしたね。
 漆掻き職人の工藤竹夫さんの仕事を丹念に取材していましたが、工藤さんのこれまでの54年の漆掻き人生がしみじみと伝わってくる内容でした。何度も漆掻きをやめようと思ったという話はよく聞かされるのですが、それでも新緑を見ると自然と山に足が向いてしまうのだと、微笑みながらゆっくりと語る工藤さんの姿。若い頃の映像と写真、家族の方のお話をテレビを通じて聞いていると、普段お会いしている工藤さんがなんだか神々しく見えてきます。
 ライバル意識の高い漆掻き職人の間でも、工藤さんの丁寧な手さばきで採る漆はとても評価されています。私も工藤さんから漆を買って精製しましたので、欲しい方はぜひネットショップで漆チューブをどうぞ(笑)
 それから、漆の苗木を育てているところを映像で見る機会というのもなかなかありません。今回の番組ではそこも丁寧に撮っていました。漆掻きの大森清太郎さんは、苗木を育てている数少ない職人の一人。春先に大森さん一家で苗畑に種を撒いているところや、シーズンが終わったあとに立木に登って漆の実を採取しているシーンまで撮影していました。大森さんは最近まで浄法寺以外の地域まで出稼ぎに行って現地で泊まりこみながら漆を掻くというやり方で続けてきた方です。
 苗木を育て、植栽し、15年以上かけて手入れをし育てて、1本の木からコップ一杯分の漆を採りきって、伐採する。この仕事の一端をテレビで見ていただいただけでも、漆の稀少性が伝わったのではないでしょうか。
 私は漆の価格が高くて勿体無いからというのではなくて、このような職人の仕事を目の当たりにしているからこそ、少しでも無駄にせず大事に漆を取り扱っています。
 漆の木の「血の一滴」、職人の「血の一滴」でもあるのです。だから、私の精製漆には何も添加していません。そして皆さんにはピュアな漆で塗った漆器を使っていただきたいのです。

(写真は工藤さんと研修生の猪狩さんが伐採木を積んでいるところです)