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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

漆について語るとき

 私は漆に関わってから5年程しか経っていませんし、まだまだ漆については知らないことばかりです。

 なんとなく救われたような気になれるのは、この道50年以上の漆掻き職人が「漆というものは結局分からない」と言うのを聞く時だったりしますが、これは毎日毎日、真剣に漆と向き合っている職人の言葉なので当然それを聞いて安心していられるわけでもありません。

 1月に東京で行われた漆サミットでは多くの漆関係者に会いましたが、漆に対する接し方や考え方は十人十色で、ベテランの職人や作家でも相反する意見を持っていることも多いです。同じ漆産地でもそれぞれスタンスが全く違うので、共通する部分もあれば全く相容れないところもあります。

 ただ、それが漆の面白いところであって、縄文時代からの歴史があるにもかかわらず、まだまだ発展途上の分野なのだなあと思うのです。漆の成分分析は古くから研究が始まっていましたが、劣化の過程など目下研究中の分野も多くあります。漆の起源がどこかという議論もまだ続いていますし…
 また、漆を使いこなす側からも「良い漆、悪い漆」の評価がまちまちで、こちらで悪い漆だと思っていても、意外といい漆として評価されたりもします。

 漆産地・浄法寺の利点は、漆の様々な分野と関わりができるということですね。其故、中立的な立場を取らざるを得ない場面も出てきます。
 もちろん、産地の立場として純粋に考えた場合、漆の生産をどう確保していくかというのが第一義ですし、周囲に振り回されて方向性を見失うことだけは避けたい。しかも浄法寺の漆掻きというのはこの土地ならではの文化ですので、産業と文化の両側面をなんとか両立していかなればなりません。
 ここが浄法寺漆の存続を考えた時に一番ポイントとなるところであって、どちらかでもバランスを崩してしまうといずれ漆の生産が継承できなくなる事態に陥ります。浄法寺は浄法寺漆器の産地でもありますが、他の漆器産地や伝統工芸の産地と違うところは、漆が採れるということ。それが有利な点でもあり宿命的なところでもあるのです。生計をたてるための漆掻き、農林業としての仕事を成り立たせることです。商品に付加価値をつけて売る以前の話です。
 農林業は人間の一番根源的な職業ですが、明治以降は様々な職業が生まれ、漆掻きという仕事は日本中からあっという間に消えていきます。お金を稼ぐには転職するか別の作物に転換した方が有利ですから。でもなぜか浄法寺の人たちは漆掻きを続けていきました。良質の漆が採れるとか現金収入になるという理由もあったでしょうが、ここまで組織的に集団として残ったのは岩手だけです。それにはやはり地元の気質とか地域性という要因があったのではないかと思っています。
 そのことについては社会学的な調査が森林総合研究所で行われていますので結果が気になるところです。

 それから私がこの仕事に就くに際して個人的に強く思っていることがあります。これは人にあまり開陳したことがないのですが、いずれここに書いてみたいと思っています。