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japanjoboji blog

浄法寺漆産業 一人社長のブログです。 漆の産地、岩手県浄法寺の漆や漆器のこと、その他いろいろつづります。

東京文化財研究所へ

うるしのこと

 東京に来ています‥って先週も漆サミットだったんじゃない?と言われそうですが、2週連続、いや3週連続の東京出張になる予定です。来週は岩手県東京事務所に呼ばれて漆の話をすることになっています。
 今回は東京文化財研究所主催の、伝統的修復材料および合成樹脂に関する研究会「建築文化財における漆塗装の調査と修理」という難しそうなテーマのセミナーに出席するため、二戸市うるし振興室の中村さんと一緒に参加しました。
 漆は漆器だけではなく文化財の修理修復にも必要不可欠な素材なのです。

 先日の漆サミットでお世話になった明治大学の先生方や、漆屋さん、文化財修復関係者の方々が参加していて顔見知り多数。なんとなく漆サミットから引き続き東京にいる感じです。

 プログラムは次の通りでした。

1 漆塗料の劣化メカニズムを探る 明治大学 研究推進員 本多貴之
2 建築文化財における漆塗装の歴史 東京文化財研究所 北野信彦
3 日光社寺建造物群における漆塗装の修理 日光社寺文化財保存会 佐藤則武
4 建築文化財における塗装修理の考え方 文化庁 西和彦

 漆の劣化については先日の漆サミットでも発表がありましたが、漆芸の世界では経験的に処理されてきたものが、科学的にその過程が立証されようとしています。昔の人の考え方がほぼ合理的であったことが分かります。

 日光の修理修復は江戸時代からめんめんと続いてきた一大事業みたいなもので、その技術の伝承が図面のほか口伝でもあったという話で、それが日光の文化を支えてきた一つの力になっているような気がします。
 漆のバリエーションも塗る箇所によって様々で、試行錯誤しながら漆を試して使ってきたことが分かりました。昔から漆は高価なものだったので、下地を工夫したり、漆に何かを添加したりして、バランスを取りながら修理が行われていたのです。

 日本の建造文化財の修復の考え方はヨーロッパのような可逆性のある素材(合成樹脂とか)を使う考え方とは違い、もともとの素材を使って(同種同材)できるだけ伝統的な工法で修理するのが原則。しかも美術品とは違い風雨にさらされているので、周期的な修理を行って保護を行う考え方です。必要があれば、我々が見慣れた姿とは違う建造当初の姿に復原する方法で行われることもあるので、違和感を感じてしまうこともあります。最近は周辺住民の声も大きく無視できない存在になっているようです。
 古代〜近世の建造物についてそういうことがあるのは想像に固くないですが、明治〜昭和期に作られた建造物で課題となっているのが、修理材料がなく困っている事例。ペンキとかそういうありふれたものでも入手困難になっているのです。文化庁では原材料の確保を喫緊の課題として捉えているようで、始まったばかりではありますが「ふるさと文化財の森システム事業」が導入され、浄法寺漆林も第1号に指定されています。

 漆については我が浄法寺がある程度の生産量を確保していますが、それでも将来的な不安を抱えています。将来世代に引き継いでいくためにも文化財用の資源を確保していくことが必要です。やっぱり何事にも長期的な視野は大事ですね。


 ところで日光では浄法寺漆100%で修理修復していただいていますが、あらぬ噂が立てられているようです。日光が漆を買い占めて値段を釣り上げたとか‥ 漆はまだまだ余っていますし、漆は適正な価格(職人が副業を含めて生計を立てられるくらいの)にも達していません。そういうことを言うのであれば数年前の漆が安く余ってる頃にもっと漆を買ってくれればよかったのに、と思ってしまいます。

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上野の東照宮も修理が始まっていました。5年間の修理計画とのことです。